ArtNote/美術運動/現代版画
MOVEMENT

現代版画

Contemporary Printmaking
1950s– 国際 収録作家 21人

銅版や木版の刷り台の前に立つ作家たちは、もはや絵画の下請けではなくなった。長らく版画は、一人の画家が描いた原画を彫師と摺師が分担して複製する仕事だった。しかし戦後の日本では、構想から製版、摺りまでを一人の作家がすべて手がける「創作版画」の考え方が広がり、版画は絵画や彫刻と並ぶ独立した表現領域として認められていく。北川健次が銅版画に写真や文字の断片を組み込み、記憶や時間の層を重ねるように画面を構築したのは、その延長線上にある試みである。

技術面の広がりも大きい。木版、銅版、リトグラフ、シルクスクリーンといった従来の技法に加え、写真製版やコンピュータによる画像処理、さらには樹脂やアクリル絵具を版材に用いる方法まで、版画の定義そのものが押し広げられていった。小野耕石は微細な点を重ねて盛り上げるように摺る独自の技法で、版画を絵画や彫刻の境界に近づけている。園山晴巳や大島成己のように、写真的な視覚とドローイングの感覚を版に持ち込む作家も現れ、版画は「複製の技術」から「一回性を含んだ表現」へと重心を移していった。

作家像も多様である。山本容子は銅版画による繊細な線とやわらかな色彩で、文学作品の挿画から独立した作品まで幅広く手がけ、版画を身近な美術として広く親しませた。斉藤里香や村上早は、身体や生き物のイメージを版の力で増幅し、木村秀樹や島州一は木版や銅版の物質性そのものに向き合う。久保卓治や北野敏美、森岡完介らも、それぞれの版種と技法にこだわりながら、個人の主題を追求してきた点で共通する。

こうした動きは、絵画の下位に置かれがちだった版画の地位を大きく変え、若い作家たちが素材と技法を自由に選び直す土台をつくった。展示室で見るときは、絵に見える完成像だけでなく、版という道具立てが画面にどんな痕跡を残しているかに目を凝らしたい。刷りの重なり、版の縁、インクのにじみ――そこに、それ以前の複製版画とは異なる、作家一人ひとりの手の跡が刻まれている。

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開催中2026年度 II 「言葉を観る、美術を読む」
徳島県立近代美術館(〒770-8070 徳島県徳島市八万町向寺山 文化の森総合公園内) ・ 2026.07.11 – 2026.09.30
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この解説は ArtNote 編集部が執筆しています。 誤りを報告する