新古典主義
一七四八年に発掘が本格化したポンペイの遺跡から、色鮮やかな壁画や均整のとれた彫刻が次々と姿を現した。それまで人々が想像していた古代とは違う、生々しい実物の古代がそこにあった。この衝撃は美術家たちの手元にすぐ届き、曲線的で装飾過多なロココ様式への反発とも結びついて、古代ギリシア・ローマの秩序と理性を手本とする新しい絵画・彫刻の潮流を生み出した。
新古典主義の画家たちは、輪郭線をくっきりと際立たせ、筆の跡を目立たせず、劇場の一場面のように人物を配置する構図を好んだ。感情を誇張せず、市民としての義務や自己犠牲といった主題を、冷静で理知的な形式に収めることを目指した。これは啓蒙思想が説く理性と徳の重視、そしてフランス革命前後の緊張した政治状況とも響き合っていた。アントニオ・カノーヴァの大理石彫刻に見られる滑らかな肌の表現と静謐な佇まいは、古代彫刻を単に真似るのではなく、理想化された人体美として蘇らせた好例である。
肖像画の分野では、エリザベート・ヴィジェ・ルブランやアデライード・ラビール=ギアールのような女性画家が王侯貴族や自らの姿を、端正な構成と冷静な観察眼で描いた。アンゲリカ・カウフマンは古代の主題を扱いながら、当時女性には難しいとされた歴史画の分野で高い評価を得た。アントワーヌ=ジャン・グロやアンヌ=ルイ・ジロデは師の様式を受け継ぎつつ、劇的な明暗やロマン主義的な感情表現へと踏み出し、次の時代への橋渡し役となった。
新古典主義が確立した「均衡のとれた構図」「理想化された人体」という規範は、その後の美術教育の基礎として長く生き続けた。同時にそれへの反発として、感情や個性を重んじるロマン主義が育っていく。作品を見るときは、静かに整えられた画面の奥に、革命前夜の緊張や古代への熱狂といった当時の空気が潜んでいることを思い出してほしい。