ArtNote/美術運動/オプ・アート
MOVEMENT

オプ・アート

Op Art
1960s 国際 収録作家 9人

白い壁に規則正しく並んだ黒い円が、見ているうちに脈打ち始め、震え出す。ヴィクトル・ヴァザルリやブリジット・ライリーが手がけたのは、絵具の色や物語ではなく、人間の目そのものを素材にする絵画だった。縞模様や同心円、格子状のパターンを精密に計算して並べることで、網膜の残像や錯視を引き起こし、静止した画面の中に運動や振動を生じさせる。筆致や作者の個性を消し去り、見る者の生理的な反応こそを作品の中身に据えた点で、それまでの絵画とは目的が根本から異なっていた。

この運動が形を成した背景には、戦後の科学技術への強い関心があった。知覚心理学やゲシュタルト理論への関心が広がり、テレビや広告といった新しいメディアが人々の視覚環境を変えつつあった時代である。抽象表現主義の主観的で情熱的な筆致に対する反動として、匿名的で工業製品のように均質な画面を選び取った作家も多い。1965年にニューヨーク近代美術館で開かれた「The Responsive Eye」という展覧会は、この傾向に「オプ・アート」という呼び名を広く定着させる契機になった。

作家たちの方法は多様である。リチャード・アヌスケヴィッチは色彩の対比だけで画面を振動させ、ヤアコフ・アガムは見る角度によって絵柄が変化するレリーフ状の作品を作った。ジェズス=ラファエル・ソトやアレクサンダー・カルダーは平面を離れ、光や動きそのものを彫刻に取り込んでいる。ポール・タルコフスキーやアブラアン・パラテニク、ピーター・セドグリーもそれぞれの土地で同時多発的にこの探求に加わり、国境を越えた運動になった点も特徴である。

オプ・アートはやがてファッションやインテリアのデザインにも取り入れられ、美術と大衆文化の距離を縮めた。今日この種の作品を見るときは、絵から少し離れたり近づいたりしてみるとよい。画面が実際に動くわけではないのに、なぜ目は揺れを感じてしまうのか。その戸惑いこそが、作家たちが仕掛けた体験そのものである。

この運動の作家

オプ・アートの作品と出会ったら、ArtNoteで記録しよう作品を撮るだけ。タイトルも作家も、AIが整理します。
アプリを入手
この解説は ArtNote 編集部が執筆しています。 誤りを報告する