シュルレアリスム
シュルレアリスムは、一九二四年にパリで宣言された、美術と文学にまたがる運動である。詩人アンドレ・ブルトンが起草した宣言がその出発点で、理性や道徳、習慣によって整えられる前の心の動き——夢や無意識——にこそ人間の真実があるとし、それを取り出す方法を探した。第一次世界大戦がもたらした破壊のあと、理性を信頼してきた文明への不信が広がっており、その反動という側面が強い。先行するダダの破壊的な身振りを引き継ぎつつ、破壊のあとに何を置くかを考えた運動でもあった。
方法として重視されたのが、自動記述(オートマティスム)や、無関係なものを並べて意味を衝突させるデペイズマンである。フロイトの精神分析が広く読まれたことも背景にある。絵画の先例としては、人気のない広場に長い影を落とすデ・キリコの画面が、宣言以前から彼らに強い印象を与えていた。表現の幅は大きく、精密な写実で不可能な光景を描く方向と、抽象的な形態が有機的に増殖していく方向とが並んで存在した。
絵画ではダリ、マグリット、エルンスト、ミロ、タンギーらが知られる。マグリットが日常の事物をわずかにずらして見せるのに対し、ミロは記号のような形が漂う画面をつくった。同じ運動の名で括られていても、その画面は驚くほど違う。写真や映画、彫刻、そしてファッションへも波及し、その領域の広さがこの運動の特徴でもある。運動は展覧会を国境を越えて重ねながら広がり、第二次世界大戦で中心人物が亡命したことで、その活動範囲はさらに拡大した。
シュルレアリスムは、二十世紀後半の美術に「見えているものが世界のすべてではない」という前提を残した。広告やミュージックビデオが日常的に使う視覚的な飛躍も、遠くはここに源がある。作品を見るときは、描かれたものを解釈しようと急がず、まず自分がなぜ落ち着かない気持ちになるのかを確かめるとよい。その居心地の悪さこそが、この運動が狙ったものである。