ArtNote/美術運動/トランスアヴァンギャルディア
MOVEMENT

トランスアヴァンギャルディア

Transavanguardia
1980s イタリア 収録作家 4人

1979年、批評家アキッレ・ボニート・オリヴァが数人の画家たちの仕事に共通する態度を見出し、これに名前を与えた。トランスアヴァンギャルディア、すなわち「前衛の彼方へ」。前衛芸術はそれまで、常に新しい様式を提唱し、過去を否定することで進んできた。ミニマル・アートやコンセプチュアル・アートは、絵の具や筆触といった絵画の身体性そのものを切り捨てる方向に進んでいた。トランスアヴァンギャルディアはこれに逆らい、絵筆を握り直し、神話や歴史画、宗教画といった古い主題を臆面もなく引用する道を選んだ。様式の純潔を守るのではなく、時代も地域も異なる図像を並べて縫い合わせることこそが、この運動の方法だった。

背景には、産業が行き詰まりを見せ始めたイタリア社会の空気と、コンセプチュアル・アートへの疲労があった。理屈で武装した芸術は、鑑賞者を突き放し、美術館の外の人々を置き去りにしていた。画家たちは、感覚に直接訴える絵画へ回帰することで、この閉塞を破ろうとした。同時期、ドイツでは新表現主義と呼ばれる、荒々しい筆致で具象を描く動きが起きており、両者は呼応し合いながら国際的な潮流を形づくっていった。

代表的な作家として、サンドロ・キアは巨大な人物像を鮮やかな色彩で描き、古典彫刻めいた量感とマンガのような軽さを同居させた。フランチェスコ・クレメンテは自らの身体や顔を素材に、夢と性を織り交ぜた図像を水彩やフレスコで描き続けた。エンツォ・クッキは故郷の丘陵地帯の記憶を、荒れた筆致と暗い色調の風景に変えた。ミモ・パラディーノは古代の彫像や記号を思わせる形態を、簡潔な線と象徴的な色面に落とし込んだ。四人とも技法も主題も異なるが、過去の図像を恐れず自分のものにする点で一致している。

この運動は美術市場の好況にも支えられ、絵画の商品性を隠さなかった点で批判も浴びた。しかし、様式の純化を絶対視する近代美術史の見方に風穴を開け、引用と混淆を当然の手法とする後の美術へ道を開いた功績は大きい。作品を前にしては、どの神話やどの巨匠の図像が紛れ込んでいるかを探しながら、絵の具の物質感そのものを味わってみてほしい。

この運動の作家

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この解説は ArtNote 編集部が執筆しています。 誤りを報告する